スタッフに感謝される昇給とやってはいけない昇給

スタッフの給料はどのように上げればいいか?

というのは悩ましいところだと思います。
そもそもベースの給料の設定もどうすればいいかという悩みも
あると思います。

まずベースの給料についてですが、同業の給与水準よりも
若干上回る金額が良いでしょう。

これは労基法の観点からの話になりますが、給料を下げるのは
難しいのです。
下げられるとしても労働基準法第91条を目安として10%ほどです。

※ 労働基準法 第91条
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、
その減給は、1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、
総額が一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない。

マキャベリの君主論に

悪行は一気に、善行は徐々に

という言葉があります。
悪いことは全て一気に終わらせ、良いことは少しずつ長い時間をかけて
行った方が良いという意味です。

例えば業績が悪い会社があったとします。
30人をリストラしないと会社が危機的状況に陥るので
1ヶ月かけて毎日1人ずつ辞めてもらいます。
この場合、社員はどのような心理状態に陥るでしょうか?
毎日ひとが減っていくので、「次は自分の番かもしれない」
と不安にかられ、仕事も手につかないでしょうし、
「いつまでやるんだ?」と会社に対する不信感も強くなります。

毎日1人ずつ辞めてもらうよりも最初に30人に辞めてもらい
その後は一切リストラせずに残った社員に頑張ってもらった
方が社員も不安なく働けます。

悪いことはダラダラとやるより一気にやって終わらせる方が
良いということです。

最初に基本給を高く設定し過ぎると能力と見合わなかったときに
モヤモヤすると思います。

こんなに高い給料払っているのに能力と給料が見合ってないじゃないか!

と怒りすら覚えるようになります。
下げるのも難しいことからモヤモヤした状態が続き、
その社員の些細な言動でも気に障ることがあると
院長は強く当たってしまうという感じになります。

こうなると院長とその社員の関係性は悪くなり、
問題社員になる場合もありますし、辞めることもあります。

こうならないためにも善行は徐々にということが大事だと思います。

20万円の給料のスタッフがいたとします。
どちらが良いと思いますか?

一気に3万円上げて3年間昇給しない
毎年1万円ずつ3年間かけて昇給する

スタッフからすれば一気に3万円上がるのはとても嬉しいと思います。
しかしこの嬉しさはどのくらい続くのでしょうか?
金銭に対する喜びはだいたい3ヶ月くらいしかもたないと言われています。
3ヶ月くらい経つと慣れてしまうのです。
その後3年間昇給がないと

ウチの病院は昇給がない

と思うようになります。
一方で毎年1万円ずつ昇給していると、毎年少しずつ上がるので

毎年給料が増えている

と思い、院長に対して感謝の念を抱くようになります。

一気に3万円昇給した人と3年間にわたり毎年1万円ずつ昇給
した人の総額と差額を計算すると以下のようになります。

1年間:23万円×12ヶ月=276万円
3年間:276万円×3年=828万円

1年目:21万円×12ヶ月=252万円
2年目:22万円×12ヶ月=264万円
3年目:23万円×12ヶ月=276万円
3年間の合計は793万円

828万円-793万円=35万円

35万円多く払っても不満を抱かれてしまうかもしれません。

給料は一気に高くすると下げられないし、その後昇給しないと
不満を抱かれる。
毎年少しずつ上げた方が恨まれない。

このことを覚えておき、昇給時の参考にしてもらえればと思います。

※ 君主論 (Wikipediaより)

『君主論』(くんしゅろん、伊: Il Principe, イル・プリンチペ)は、
1532年に刊行されたニッコロ・マキャヴェッリによる、イタリア語で書かれた政治学の著作である。

歴史上の様々な君主および君主国を分析し、君主とはどうあるものか、
君主として権力を獲得し、また保持し続けるにはどのような力量(徳、ヴィルトゥ)が
必要かなどを論じている。その政治思想から現実主義の古典として位置づけられる。