憎き後輩を可愛くてしょうがないと激変した看護師の視点

同じ時期に入ったスタッフでもできる人とできない人で差が開いてきます。
できない人はだいたい3つのパターンではないでしょうか。

何度教えても覚えない人
言うことを聞かない人
注意しても直らない人

先輩からすれば何度教えても仕事を覚えない、
できるようにならない後輩
に対してはうんざりしてくるし、
言うことを聞かない、注意しても直らない人には
怒りすら覚えます。

こうなってくると先輩スタッフは後輩の面倒を見なくなり、
関係性が築けなくなります。
関係性が築けなくなると仲が悪くなり院内の雰囲気が悪くなります。

そして先輩スタッフが後輩の育成放棄をするとなかなか育たないことから
先輩スタッフの仕事の負担が減らず、イライラして後輩スタッフへの当たりが
きつくなり、さらに関係性が悪化するという悪いスパイラルに陥ります。

関係悪化の悪いスパイラルに陥ると派閥ができたり、先輩VS後輩
といった戦国時代に突入していきます。

こうなってしまうと院長もお手上げになるのではないでしょうか。
院長も薄々気づいてはいるけれど面倒だから見てみないふりを
しているということはけっこうあるようです。

動物病院経営で一番面倒なのは人間関係ですからね。

ある動物病院では何度教えても覚えが悪いスタッフがいました。
先輩スタッフもどうやって育てればいいか悩んでいました。

ただでさえ、自分の仕事が忙しいのにその中で後輩に仕事を教えている
のになかなか覚えないのだからイライラするのは仕方ないと思います。

そこで私はその先輩スタッフに

「入ってくる人全員ができる人とは限らないし、
人によって物覚えの速さも違う。
教えてもなかなかできないのであれば、
その人ができることを徹底させること。
何でもいいから仕事ができるようになり
自信を持たせることが大事。

人間はもともとネガティブな面を見る習性がある。
だから普通にしていれば人の悪い面を見る。
教える側は、人の良い面を見るようにして
接することが大事。」

と伝えました。
そして数カ月が経ち、聞いてみると

「今は後輩が可愛くてしょうがないです。」

と言うように変わったのです。
このあまりの変わりように

いったい何があったんだ?

と思い、聞いてみました。

「その子の良い点を見るようにしたんです。」

私はこの話を聞いたとき、この先輩スタッフに

「Yさんは先輩スタッフの鏡だね!」

と言いました。
この先輩スタッフも素直だからできたのだと思います。
やはり大事なのは素直さなのだと改めて実感しました。

教育心理学にはピグマリオン効果という心理的行動があります。
ピグマリオン効果とは、人間は期待された通りに成果を出す傾向がある
ということです。

先輩スタッフが、「この子は真面目だし、きっとできるはず」
と思いながら接していると後輩スタッフにもそうした想いは
伝わります。人間はこうした感覚は敏感なのです。

私自身も人材育成で動物病院を訪問した際には、
目の前のスタッフへの先入観はひとまず置いて
必ず成長すると思って接しています。

過去に院長からは「このスタッフはなかなか厳しいんですよ」
と言われていたスタッフでも数年経ったら模範的なスタッフに
変わったという例はあります。

人を育てるにあたり、ピグマリオン効果は知っておいた方が良いですね。

ピグマリオン効果(Wikipediaより)

1964年春、教育現場での実験として、サンフランシスコの小学校で、
ハーバード式突発性学習能力予測テストと名づけた普通の知能テストを行ない、
学級担任には、今後数ヶ月の間に成績が伸びてくる学習者を割り出すための検査
であると説明した。

しかし、実際のところ検査には何の意味もなく、実験施行者は、
検査の結果と関係なく無作為に選ばれた児童の名簿を学級担任に見せて、
この名簿に記載されている児童が、今後数ヶ月の間に成績が伸びる子供達だ
と伝えた。

その後、学級担任は、子供達の成績が向上するという期待を込めて、
その子供達を見ていたが、確かに成績が向上していった。
報告論文の主張では成績が向上した原因としては、
学級担任が子供達に対して、期待のこもった眼差しを向けたこと。
さらに、子供達も期待されていることを意識するため、
成績が向上していったと主張されている。